取引先から届いた契約書に、「損害の一切を賠償する」と書かれている。仕事や報酬には納得していても、万一のミスでどこまで責任を負うのか分からない。
「一般的な条項です」と説明されても、自社にとって受け入れられる条件かは、判断しにくいものです。
確認したいのは、「どのような場合に」「何について」「いくらまで」責任を負うのかという点です。
ケース:月額十数万円の仕事で、上限のない責任を求められた
※以下は想定事例であり、実際の受任事例ではありません。
小規模な制作会社が、企業のホームページ更新を月額十数万円で受託することになりました。主な仕事は、お知らせの掲載や画像の差し替えです。
契約書には「本業務に関連して発注者に生じた一切の損害を賠償する」とあり、金額の上限は見当たりません。
操作ミスでサイトが止まった場合、復旧費用だけでなく、取引先の売上が減った分まで請求されるのか。会社で負担しきれない責任を引き受けないか不安になり、相談することにしました。
1.「すべて賠償」という言葉だけで判断しない
広い表現があるからといって、相手の請求額をそのまますべて支払うことになるとは限りません。実際の責任は、契約内容やトラブルの経緯などを踏まえて判断します。
一方、「そこまで請求されないだろう」と考えて、確認せずに受け入れることも避けたいところです。
まずは、次の点を確認しましょう。
- 自社の契約違反やミスがある場合に責任を負う内容か
- 復旧費用や売上の減少など、何が対象になるか
- 賠償額に上限があるか
- 上限が適用されない例外があるか
報酬額が小さいからといって、責任も当然にその金額に収まるわけではありません。
2.そもそも、どこまでの仕事を引き受けているか
責任の範囲は、仕事内容と切り離して考えられません。
今回のケースでも、日常的な更新だけなのか、システム全体の保守やセキュリティ対策まで担当するのかで、想定するリスクは変わります。
自社で管理していないサーバーや外部サービスまで、正常に動くことを約束していないか。相手から渡された情報に誤りがあった場合も、自社の責任とされていないか。こうした点を確認します。
また、責任に関する条件が、秘密保持や保証など、別の条項に書かれていることもあります。契約書全体を見ることが必要です。
3.仕事の内容に合った条件を提案する
修正を求める際は、「責任を負いたくない」と伝えるだけでなく、自社の役割や報酬との関係を説明します。
例えば、次のような調整が考えられます。
- 自社が責任を負う場面を明確にする
- 賠償の対象となる損害を整理する
- 契約金額や一定期間の報酬を基準に上限を設ける
- 上限の例外を必要な範囲に絞る
適切な条件は、仕事の性質や想定される損害によって異なります。「この金額なら安全」という一律の基準で決めるものではありません。
契約レビューでは、現実に起こり得る問題から検討します
弁護士による契約レビューでは、条文の意味に加え、実際にどのようなトラブルが起こり得るかを整理します。そのうえで、修正の優先順位や相手に提示する案を検討します。
今回のケースなら、更新作業とシステム保守の担当範囲を明確にし、責任の条件と上限を確認します。公開前の承認やバックアップなど、作業手順の整備もあわせて考えます。
「受注は進めたいが、大きな損失には対応できない」といった事情もお伝えください。
引き受ける責任を、署名前に確認しませんか
当事務所では、契約書の損害賠償や責任範囲の確認、修正案の作成をご相談いただけます。
「この条件で引き受けてよいか」「責任の上限をどう提案すればよいか」とお悩みの際は、ご相談ください。契約書案と仕事内容を踏まえて検討します。
初回相談は無料です。契約書レビュー等の業務費用は、着手前にご案内します。
契約書の種類、気になっている点、相手への回答期限を、分かる範囲でお知らせください。資料は、必要に応じて後ほどお送りいただきます。
契約書の確認や取引上の相談が継続的に発生する場合は、外部法務サポート・顧問契約もご相談いただけます。
執筆:弁護士 田村 遼(群馬弁護士会所属・ニューヨーク州弁護士)